悪魔の微笑み





そして……






「じゃ、行ってくる」




朝になり、ネクタイを締めたお兄ちゃんは家の扉を開けた。

あたしはソファーに寝そべったまま、仕事に行くお兄ちゃんの後ろ姿を見送る。





「誰が来ても、絶対開けちゃいけない。

開けない限り、結界がこの部屋を守ってくれる」





お兄ちゃんは優しい。



だけど……

だけど、どうしてそこまで警戒するのか。






「輝はただの人間なのにね……」




そう呟いた。

すると、輝への恐怖心がやわらいだ気がした。

そして、ようやくあたしは遅い眠りへと堕ちていった。






お兄ちゃんの結界が守ってくれるから、あたしは平気だよ。





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