悪魔の微笑み





力を解き放とうとしても、上手くいかない。

身体すら動かない。

こんな哀れなあたしに輝はゆっくりと近付く。

そして、その指の長い手があたしの頬に触れ……

身体に電流が流れる。







「待ってたんだろ?」




輝はわざとらしい猫なで声を出す。

それがまた腹立たしい。





「俺を知ってしまったから、お前は俺から離れられねぇ」



「そんなこと……んッ……」




容赦なく口を塞がれる。

そして、いつもの甘く荒々しいキスが始まる。




好きじゃないのに。

大嫌いなのに。

なのに、抵抗出来ないあたし。

その口づけに酔って、全てを受け入れてしまう。

力が抜けて、全てがどうでも良くなってしまう。




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