悪魔の微笑み




お兄ちゃんは右手に力をため、次の攻撃の準備をしている。

その邪悪な気を感じ取るだけで、身体に元気が湧いてくる。

やっぱりあたしは悪魔に他ならない。

現実に愕然とする。







「玲は、俺の妹だ」




お兄ちゃんが静かに告げ、




「それは恐ろしい」




輝は鼻で笑った。




「じゃ、今日のところは引いてやるかな」






ポケットに手を突っ込んだまま、歩き出す輝。

部屋を抜け、壁の穴から外に飛び降りた。

まるで、小さな段差から飛び降りるように。






「輝!?」




思わず名前を呼んでしまうあたし。

そんなあたしに答えるように、清々しい風が吹き込んできた。








こうして、突然現れた輝は、突然消えてしまった。

あとに残されたのは、怒りに震えるお兄ちゃんと、放心状態のあたし。

家の中は散らかり、とても棲めるような状況ではない。

その部屋の真ん中に座り、あたしは身体を震わせていた。



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