悪魔の微笑み
「玲、大丈夫か?」
お兄ちゃんがあたしに駆け寄り、震えるあたしの身体を優しく包んでくれる。
黒い髪は短く、風にネクタイを揺らしているお兄ちゃん。
もはや翼も角もなく、漆黒の瞳があたしを見つめていた。
そんなお兄ちゃんにぎゅっと掴まるあたし。
あたしの唇から、耐えきれない思いが零れた。
「どうして悪魔なの?」
声を発したら、それはとめどなく溢れてくる。
「どうして、あんな奴が天使なの?」
ずっと天使に憧れてきた。
白い翼を持ち、幸せを運ぶ天使に。
なのに、どれだけいい子になってもあたしは悪魔のまま。
神様は、不公平だ。