悪魔の微笑み
「玲」
お兄ちゃんはあたしを呼び、その手であたしの頭を撫でてくれる。
「俺たちが悪魔として生まれてきたのは、悪魔としての役割があるんだよ」
その声は、いつになく優しい。
「誰が悪魔は悪者って決めた?
悪魔がいるからこそ、人間の秩序が保たれている。
だから俺は……」
お兄ちゃんはあたしをじっと見つめた。
あたしも、お兄ちゃんを見つめる。
「悪魔であることに、誇りを持っている」
そっか……。
お兄ちゃんはすごいな。
嫌われ者の悪魔なのに、誇りを持てるなんて。
だけど、なんだか嬉しかった。
少し前向きになれそうな気がした。
最悪な天使だっているのだから、あたしは最善な悪魔になってやる。
悪魔だという事実は、変えられないものだから。