悪魔の微笑み





身体の震えが止まらない。

それは、決して寒いからではない。

とてもとても恐ろしいから。







廊下を並んで歩いた。

静かな廊下に、あたしたちの靴の音が響き渡る。

身体が震え、そして冷や汗が噴き出した。




輝は無言で、まるであたしに感心がないようで。

それがまた酷く恐ろしい。

今すぐにでも逃げ出したいと思った。






逃げだしたい……



待てよ……






頭の中で閃く。

人間でない輝にあたしの正体がバレるのは構わない。

いや、もうバレている。

だからこの場で姿をくらまして……






「逃げたって無駄だからな」




タイムリーなその言葉に、




「ひぃぃぃっ!!」




飛び上がるあたし。

恐怖で心臓が萎縮した気分だった。



< 88 / 307 >

この作品をシェア

pagetop