インストール・ハニー
◆
……なんかヘン、だ。すごーい視線を感じる。嫉妬と羨望っていうか、あと無駄に熱い視線。背筋がゾクゾクするよ。これは……
「さあ、着いたよ青葉。授業がんばっておいで」
ヒラヒラと手を振る楓。青葉、そう発音する声の心地良いこと。彼があたしの為に居るっていうの、なんか勘違いしてしまいそう。くるっと背を向けて、歩き出した。校門を通る生徒達に混ざる。授業が始まるあたりで、楓を戻しておこう。
「青葉、学校終わったら連絡して! 俺、迎えに来るから」
いやあああ! でっけー声出すなよおおおお。
後ろからの大声に、肛門が締まった。ここ校門ですけど。とか言ってる場合じゃない。肛門への破壊力が凄いよ。
……目立ってる。アイツだアイツ。
あたしは校門を急いで抜け、早歩きで行く。女子が、振り返って見てる。2度見どころか、何回も見てる人も居る。あたしもちょっと振り返る。まだ居た。そりゃそうだね、スマホに戻してないもんね。他の男子も見てる。あたしじゃなくてね、彼。楓を。楓を見てるの。みんな。
「ちょっと! 青葉っ! 今のあの人だれ?」
いつの間に近くに居たのか、一海に腕を掴まれた。杜尾一海。
親友、といえば迷わず彼女だ。
実家は商売をやっていて、あたしのバイト先である、隣町のペンションとは、彼女の実家だ。この高校に入学して、同じクラスになって一海と仲良くなった。あたしがバイトを探してると話したら「うちでバイトしない? あたしもバイトしてんだよー」と誘ってくれたのだ。
「なにあのイケメン。どこに隠してたの!」
「か、隠してないよ!」
いや待て。隠しているといえば隠してるんだけど。ちょっと待って。すこし考えさせて……。
一海はちょっと涙ぐんでいる。なんで泣いてんの……。「大好物はカレーとイケメン」って言うだけのことはある。
「えっと、い、イトコだよ、イトコ」
「青葉、あんなイケメンイトコいたんだ」
あたしのしどろもどろな説明を、ちっとも怪しむこと無く(というか流して)目をキラキラさせる一海。校門から顔を出して、遠ざかってもう見えない、楓の去った方向をうっとりと見ていた。
「ほら、遅刻するよ!」
あたしは、じろじろ見てくる視線をかいくぐり、校舎へ入っていった。
バタバタと家を出てきたわりに、遅刻寸前という感じでは無かった。ギリギリは落ち着かないから嫌い。
「あ、宮田くんだ。おはよー!」
教室へ向かう途中、一海が声をあげた。あたしの心臓はビクリと条件反射のように飛び跳ねる。
……なんかヘン、だ。すごーい視線を感じる。嫉妬と羨望っていうか、あと無駄に熱い視線。背筋がゾクゾクするよ。これは……
「さあ、着いたよ青葉。授業がんばっておいで」
ヒラヒラと手を振る楓。青葉、そう発音する声の心地良いこと。彼があたしの為に居るっていうの、なんか勘違いしてしまいそう。くるっと背を向けて、歩き出した。校門を通る生徒達に混ざる。授業が始まるあたりで、楓を戻しておこう。
「青葉、学校終わったら連絡して! 俺、迎えに来るから」
いやあああ! でっけー声出すなよおおおお。
後ろからの大声に、肛門が締まった。ここ校門ですけど。とか言ってる場合じゃない。肛門への破壊力が凄いよ。
……目立ってる。アイツだアイツ。
あたしは校門を急いで抜け、早歩きで行く。女子が、振り返って見てる。2度見どころか、何回も見てる人も居る。あたしもちょっと振り返る。まだ居た。そりゃそうだね、スマホに戻してないもんね。他の男子も見てる。あたしじゃなくてね、彼。楓を。楓を見てるの。みんな。
「ちょっと! 青葉っ! 今のあの人だれ?」
いつの間に近くに居たのか、一海に腕を掴まれた。杜尾一海。
親友、といえば迷わず彼女だ。
実家は商売をやっていて、あたしのバイト先である、隣町のペンションとは、彼女の実家だ。この高校に入学して、同じクラスになって一海と仲良くなった。あたしがバイトを探してると話したら「うちでバイトしない? あたしもバイトしてんだよー」と誘ってくれたのだ。
「なにあのイケメン。どこに隠してたの!」
「か、隠してないよ!」
いや待て。隠しているといえば隠してるんだけど。ちょっと待って。すこし考えさせて……。
一海はちょっと涙ぐんでいる。なんで泣いてんの……。「大好物はカレーとイケメン」って言うだけのことはある。
「えっと、い、イトコだよ、イトコ」
「青葉、あんなイケメンイトコいたんだ」
あたしのしどろもどろな説明を、ちっとも怪しむこと無く(というか流して)目をキラキラさせる一海。校門から顔を出して、遠ざかってもう見えない、楓の去った方向をうっとりと見ていた。
「ほら、遅刻するよ!」
あたしは、じろじろ見てくる視線をかいくぐり、校舎へ入っていった。
バタバタと家を出てきたわりに、遅刻寸前という感じでは無かった。ギリギリは落ち着かないから嫌い。
「あ、宮田くんだ。おはよー!」
教室へ向かう途中、一海が声をあげた。あたしの心臓はビクリと条件反射のように飛び跳ねる。