インストール・ハニー

「……青葉」

「なに? もうそろそろ戻らないと。あの塀に隠れて」

 あたしはスマホを取り出した。

「思ったんだけどさ、俺もバイトしようかな」

 スマホのキーマークをスライド。……今、なんて言った?

「頼んでみようよ。夏休みだけって」

「はぁ?」

 楓がバイトするだって? 「サンライト」で?

「紹介も兼ねて、一石二鳥じゃないか」

「本気?」

「ほんき」

 深く頷いた。困ったなぁ。でも、どっちにしろ一海に紹介しようと思ってたし、聞いてみるだけしようかな……。人手が欲しいんだったら。いらないかもしれないし。

 側に置いてたほうが、あたしも何かと安心するし。

「……分かった。聞いてみる」

「オッケー。さすが青葉だね」

 じゃあ、帰りは3人で一緒に帰ろうと言って、手を振って塀に隠れた楓を確認して、まわりも確認、そしてスマホに戻した。

 なんてこと。楓があんなことを言うなんて。校門を通りながら、まず楓を一海に紹介するイメトレをして、それからバイトのことを考えた。
 空を見上げると、今日も暑くするぜって感じの太陽だった。

「おはよー青葉。夏休み中どこかで遊びたいよね。うちのママも言ってたから。泊まってくれてもいいし。夜更かししよう夜更かし!」

 教室に入ると、既に登校していた一海が声をかけてきた。教室の埋まり具合は半分くらい。

「いいねー夏だし花火もしたい!」

「お盆期間中だと、忙しくて遊べないもんね」


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