インストール・ハニー

 明日から夏休みに入る。そして同時にバイトが夏休みシフトになる。お盆期間なんかもうとっくに予約でいっぱいだ。

 一海には年の離れたお兄さんが居て、調理師をしている。まかないが美味しくて、あたしもうお兄さんと結婚すれば良いんじゃないかと思っている。(冗談だけど)

 でも残念なことに、お兄さんは結婚を約束した方がいらっしゃるので、そうもいかない。

「去年、楽しかったよね。砂浜で花火してスイカ食べてさー」

 一海が目を輝かせて去年の夏休みの話をしている。海水浴はできなかったけど。

「シーズン最後の方だったけどね」

 ああ、今年も楽しい夏にしたいな。楓も居ることだし。そう、楓がね……。


「夏休みどこか行く話?」

 背後からねっとりした声が聞こえてきた。これは……。あたしは振り向いた。

「さ、佐山さん(あと愉快な仲間達)」

 取り巻き3人と佐山さん。つけまつ毛バッチリですね。いくら自由な学校とはいえ、なんだか似合っていない。

「あの彼と? どこかに行くの?」

「ち、違うよ。あたし夏休みバイトだし……」

「ああそっか。一海ちゃんちでバイトしてるんだっけ山都さん」

 なんでも知ってらっしゃいますね……。飽きてなかったんだ、楓のこと。

「夏休み、遊びに行くね!」

「は、はぁ」

 来なくて良いんですけど。……あんまり嬉しく無いんで。

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