インストール・ハニー

「おはようって、もう昼だけど」

「俺、たしか今日は朝の挨拶しなかったから」

「……そう」

 一日の始まりは挨拶から、だろうか。ちゃんとしてるなー。……って、感心してる場合じゃない。一海が待ってる。

「あのさ、一海に紹介するから。友達の」

「ああ、もう居るの?」

「あっちのコンビニで待ってる。終業式終わったし、このまま3人で一緒に帰ろう」

「分かった」

 出てくるところを誰にも見られなかったし、もうこの道から出ても良いだろう。挙動不審にならないよう、楓を連れてもとの道路へ戻った。

「あれ、あそこのコンビニ」

「なんかアイス食べたいな」

「そう、さっきも一海と言ってたの。暑いよね」

 暑いもんね。楓もアイス食べるんだ。なんだか不思議だけど。

「食べよう食べよう」

 楓は微笑んで、あたしの前を歩いた。すれ違う女の子2人連れが楓に視線を向けて居た。通り過ぎてからちょっと振り返ってみると、あっちも振り返って見てた。別に楓を見るのが気になったわけじゃなくて、他の人にも楓が見えているんだと確認したかった。だって見えてなかったら大変だし。

 校門でみんなに見られてるけど、なんか不具合であたしにしか見えなくなってる、なんてことになったら困るし。

「暑いなー今日も」

「そうだねー」

 アイスが食べたい。

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