インストール・ハニー
「いらっしゃいませー」
コンビニにたどり着く。10分くらい待たせてしまっただろうか。外から見た時、一海は雑誌を夢中で立ち読みしてて、あたし達が前を通ったことに気付かなかった様子だった。
店内のクーラーが肌に気持ち良い。楓もほうっと息をついていた。
「一海、一海」
まだ夢中で立ち読みをしているので、一海に声をかける。
「あ、来たの? 分かんなかったー」
「なに読んでんのよ夢中で」
一海が手にしているのはファッション雑誌だった。夏のファッション特集みたいな文字が表紙に踊る。
「サンダルと水着が可愛くてさー。欲しくなった」
水着かぁ。あたしも欲しいかも。高いのは買えないけど。あとは体型と相談しよう。
「買いに行こうか」
話題が夏っぽい。去年はできなかったけど、夏休みだし、海水浴のチャンスがあるかもしれない。「サンライト」から歩いて海水浴場へ行けるしね。
「行こう行こう! 帰り寄って行こうよ」
あ、帰り……って楓は? あれ? 後ろに居たはずの楓が居ない。どこに行ったんだろう。店内には数人の客が居た。見回す。反対側を向いた時に、棚の向こうに居た。身長が高いからすぐ分かる。何か買いたい物でもあったんだろうか。
「楓。こっちだよ」
走り寄って、声をかけた。
「アイスどこにあるかなって思って」
アイスかよ。
「一海あっちに居るから。あとアイス買って出ようよ」
「はいはい」
雑誌コーナーに戻ると、一海がニヤニヤしていた。やめろその顔。
「楓くんで、一海ちゃんです。仲良くしてください。よろしくお願いします」
「よろしく、カズミ」
呼び捨てかよ! いきなりかよ! ちょっと王子様、礼儀がなってないわ!
「楓くんよろしくねー。良いよ呼び捨てで」
あたしのハッとした顔を認めて、一海が笑いながら言った。