インストール・ハニー
部屋に戻ると、一海がアハハと笑っていた。楓も笑顔。
「なんか盛り上がってんね」
あたしは、なるべく笑顔で言った。暗い思いが胸にあるけれど、それは今、考えないでおきたい。
「去年の夏の話してたの。今年は楓くんも一緒に花火したいね」
「花火はしたことが無いから」
そうなんだろうな。
「子供の頃なら誰でもやってそうだけどね。楓くんどこ住んでるの?」
「青葉の部屋」
ぎゃー! 余計なこと言わないで!
「……一緒に寝てんの?」
一海が両頬に手を当てて、赤面している。なんであんたが赤くなるのよ。
「違う違う。あの、楓はイギリスで生まれて育って、そして日本に来たの最近なんだって……っ」
「へぇ」
イギリスにも花火はあるだろ……会話にボロが出て嘘がバレそうだ。早くこの話止めたい。出生とか昔の話とか聞かないで。心臓に悪い。鼻の穴とか膨らんでるよあたし、きっと。
「去年だな。帰ってきてすぐ青葉と出会ったんだもんな」
楓が話を合わせてきた。ああでも、あまり余計なこと言わないでね。彼と目が合い、目で訴えかけた。心臓が10%くらい縮んだような感じがする。
「付き合ってんでしょ? 2人」
一海がまた変なことを聞き出した。やめてくれもう……。
「そうだよ俺達。聞いてなかったの? 青葉から」
「やっぱり~そうなんじゃん」
白目になった。