インストール・ハニー
「言わないんだもん青葉。楓くんのこと彼氏じゃない、好きか分かんないとか言ってっからよー」

「そうなのか?」

 そうなのよ。ああもう、2人で勝手に盛り上がって。

「もーいいじゃんそんな話……」

「俺は青葉のこと、可愛いと思ってるけどね」

 この間もそれ聞きました……。って、なにを言い出すのか、この男は。

「ほらーなんなのあんた達。ごちそうさま」

 あーあ、とか言って両足を投げ出す一海。あたしも同じ気持ちだよ。あーあ、だよ。

「幸せにやんなよもう。ところで楓くんていくつ?」

「いくつ……」

「歳、年齢」

 外国育ちだという先入観があって、会話がいまいち通じなくても、細かく説明してくれている。イギリス出身にしておいて良かったのかもしれない。

「ああ、19だよ」

 19歳だったのか。いま知った。プロフィールとかどこかに書いてあるのかも。全然見てなかった。そもそもそういうページを見ていないんだけど。

「あ、じゃあ英語圏のお客様が来ても安心だね。楓くん通訳してくれんじゃん」

「で、できるの? 楓……」

 いやできるだろ普通。イギリスで育ったことになってるんだから。

「大丈夫。翻訳機能ついてるから。話せるよ」

「……ほんやく……?」

 なにその機能。怖い。あたしも欲しいわ。

「あ、いや! 話せるよ! 英語ペラペラだから!」

「そんなら良かった。助かるわー」

 ああもう疲れる……。
 一海がジョークだと思ってくれて助かる。また寿命と身長縮むわ。

< 52 / 121 >

この作品をシェア

pagetop