インストール・ハニー
「俺のこと、どう思ってるんだよ」

 なんでそんな、切ない目であたしを見るのか。あたしの為に居るって言われて、あたしの気持ちが変化しないわけがない。

「……楓」

 側に居て、楓はあたししか見てなくて、青葉の為に居るんだって言われて、あたしの気持ちが染まって行かないわけがないでしょう。そんなの、自分で分かってる。

「なぁ」

 どう思ってるか、なんて。

「分かんないよ……そんなに、問い詰めないで」

 勝手かもしれない。泣きそうだ。でも泣いてはだめだ。楓を困らせてしまう。

「……悪かった」

 あたしの様子を感じ取ったからか、楓は引き下がった。なにも言えない自分が情けない。ごめんね、楓……。
 沈黙が苦しかった。なにか言えば良いんだろうけど、言葉が出てこない。どれくらいの時間が経ったのか分からないけど、沈黙を破って、楓が口を開いた。

「……俺は、青葉の味方だから。一緒に居たいんだ」

 また夢の様な言葉をあたしに言うんだね。心が揺さぶられる。

「あたしの思いが楓を呼んだのなら、いらなくなったら……消えてしまうの?」

「……」

 楓は黙っている。窓の方を見て。この部屋に2人で居て、こんなに重苦しい雰囲気になったのは初めてだった。なんで答えないんだろう。


「そろそろ、お母さんとか帰ってくるんじゃないのか? 戻しても良いぞ」

「楓……」

 グラスの麦茶を一気に飲んで、カタンと置く。怒ったのかな。

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