インストール・ハニー
 宿題はもうちょっとしたらやるとして、ゲームやろう。電源を入れ、起動させる。RPGが好きだから、そればっかりやっている。弟は車のレースとかやってるけど、あたしはああいうのだめ。ポータブルのゲーム機。これもバイト代で買ったんだ。

 しばらくピコピコとやっていると、調子に乗ってきた。
 キャラのレベルを上げて次のクエストへ。装備を整えて、成長させる。ああなんだか、楓のことみたいだなぁ。このゲームはリセットが利くけど、楓はそうはいかない。出会って、繋がって、そして……。


「なにやってんの?」

「うおわ」

「なにその牛みたいな声」

 牛って……。ゲームに夢中で、楓が起きてきたことに気付かなかった。

「なにそんなに夢中になってやってんの? ゲームか?」

「うん。やったことある?」

 あたしは上下開きになっているポータブルゲーム機を楓に見せた。画面見えるかな。

「俺も持ってる。同じやつかどうかは分からないけど」

「えーじゃあ、すれちがい通信できるじゃん」

「なにそれ」

 あ、そういうのは共通じゃないのか……ちょっとがっかり。

「夕食食べてきたのか?」

「うん」

 あたしはゲームを終了し、スマホを充電器に繋いだ。繋ぐ前に、黄色のスマホカバーを外して、ゴミ箱に捨てた。

「明日8時にサンライト到着ね。寝坊しないようにしなくちゃ」

「ペンションの名前がサンライトだったな、そういえば。一海が教えてくれた」

 宿題、明日やろうかな……。バイト終わってから、夜だけど。

「青葉、宿題やりなよ。邪魔しないから」

「えーうん……」

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