インストール・ハニー

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「おはようございまーす!」

 サンライトの裏口から入って、ママさんを見つけて挨拶をした。一海のお母さん、通称ママさんは、ボブカットの品の良い女性だ。オーナーはスキンヘッドだけど。初めて見る楓がビビらないと良いけど。

「あー楓くんね、よろしくね! 急で悪かったわぁ」

「この度はお世話になります。よろしくお願いいたします」

 すんごい丁寧だな……。あたしの時は「世話になる」だったのに。

「まぁ良い男だこと。青葉ちゃん、素敵な彼氏見つけたわねぇ」

 ウフフって片仮名で聞こえてきそうなママさんの笑い声に、少し照れて、そういえば一海が楓のことを、あたしの彼氏だって喋ったんだっけなって思い出した。
 ……まぁ、もう別に良いですけど。

「一海は?」

「ああ、オーナーと表の方に居るわ。食材運びしてるから手伝ってきてちょうだいね。着替えていってらっしゃい。楓くんのも用意していあるから」

「はーい」


 あたし達は休憩室で素早く着替えを済ませ、楓を連れて表に回った。

 正面の方に回ると、一海とオーナーの姿。軽トラックから玉ねぎやらにんじんやらを運んでいた。運転席には携帯電話で話すおじさん。あれは農家の人だ。

 西洋風の建物。ペンション「サンライト」。とても素敵なペンションだと思う。部屋の作りも可愛らしく、レストランも深い茶色の家具でまとめられ、カーテンは深い赤。窓は大きく、高台にあるから眺めも最高。店内はとても大人っぽく落ち着いた雰囲気だ。

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