インストール・ハニー
「行こう」
「腕力には自信があるからな」
初耳。あたし達は駆け寄って「おはようございます」と挨拶をした。
「おお、楓くんだ。よろしくなー。イケメンバイトが居るって話題になって客がわんさか来てもう3年先まで予約がいっぱいになるとかいうことを俺は考えて」
「いいからお父さん、口じゃなくて手動かしてよ手!」
「はぁい」
一海にオーナーが怒られている。いつものことだけど。
「そのユニフォーム似合ってるぅ」
一海が楓に向かって人差し指と親指で丸を作った。確かに似合ってる。さっき「サンライト」と胸に入った黒いポロシャツと、同じく黒のギャルソンエプロンに着替えたんだ。
なんかどこかの高級レストランの店員みたいだなぁ。ここペンションだけど。
そんなことを思っていると、長い手足を動かして、玉ねぎの袋を3個持って運び出した。
「良いね、男手が増えると。こういう時に助かるわー」
「そうだね」
一海が心の底から助かってる! っていう感じで言うので、あたしも笑顔になった。
「楓くん力あるなぁ。なんかやってたの? 無理しなくて良いよ」
ガンガン運ぶ楓にオーナーが声をかけた。あたしも、はりきって無理してるのかなって心配だったんだけど。
「いいえ、軽いですよ。俺、運動は大抵できるので」
「柔道でもやってたか。でも楓くんはバスケットって感じだけど。いやテニスかな……」
どっちでも良いです。オーナー。手を動かしてください。