インストール・ハニー
 荷物を運び終わると、掃除やベッドメイク、ゴミ捨てなど、仕事はたくさんあった。レストラン開店とチェックイン時間には目が回りそうだった。料理と食器を運び、洗って、お客様をご案内し、やっぱり夏休みなんだなーと痛感する。

「ちょっと青葉……いつもこんなに忙しい?」

 楓が汗を拭きながら聞いてきた。そうだよね。初日からこれじゃびっくりするよ。

「夏休みだからだね。いつもはあたし週末しかバイトしないもん」

「夏休みずっとこんな……?」

 すでにヘトヘトの様子だ。あんまり張り切らなくても良かったのに。

「ずっとじゃないと思うよ。暇な時もあるって。ここ、紅茶もあるから好きなの飲めるよ」

「それはいいな」

 お、ちょっとご機嫌直ったかな。

 楓と食器を下げたところで、厨房から男性が顔を出した。

「2人とも、夜ご飯食べて、あと上がっていいよ」

 一海のお兄さんだ。背が高く、一海とよく似ている。

「楓くんもお疲れさま。疲れたろ。初日からフル稼働だったもんな」

「明日も来て良いんでしょうか」

 変なこと聞くなぁ。魚の骨なんかを生ゴミに捨てながら思った。

「もちろんだよ。来てくれなきゃ困っちゃうよ。楓くんあと2人欲しいくらいだ。明日もよろしくな」

 休憩室にご飯あるからねーと言い残し、お兄さんは厨房へ戻って行った。

「行こう。ご飯食べて帰ろう」

 厨房の入口で立ったままの楓に声をかける。どうしたんだろう。ちょっと様子が変だけど、疲れたのかな。

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