インストール・ハニー
夏休みも半分を過ぎた頃、楓だけ休みという日があった。もちろん、あたし達2人で毎日入ってたわけじゃない。夏休みの課題もあったし。楓だけ1人で入るシフトも無かった。これはあたしが頼んだから。
楓だけ休み、といっても、スマホに戻したままってことだけど。
「楓くん居ないとつまんないわー」
そうボヤくのは一海。あたしもつまんない。
「もうずっとここで働いてるかのような戦力だもんね。物覚え早いし。お客さん受けも良い。お父さん誉めてるよ」
楓は仕事を覚えるのが早く、オーダーは空で覚えられるし、料理をお出しする時も説明付き、メニューを説明するのもお手のもの。「本日のおすすめは……」とか「今はこのお魚が旬ですので」とか言ってる。
あたしそういうの苦手なんだよね……。凄いと思う。
「ウエイター経験あるんじゃない? イギリスで」
「そ……そうかもね」
聞いてないし知らないけど。