インストール・ハニー
「楓は、この中の世界で、いつもなにやってるの?」
楓が現れて数日してからだろうか。あたしは楓に、聞いたことがあった。
「基本的には1人で居るよ。なんでそんなことを聞く?」
最近、楓はあたしの机の椅子ではなく、ベッドに腰掛けている。あたしが宿題をやっているからだ。
「んーだって、気になるし……楓の居る世界のこと」
「基本的に部屋で1人だし、ナッツとゆったりした時間を過ごすよ」
あの、画面に映し出されるシャンデリアとかある部屋ね……。
「ふうん……」
あたしは椅子を回して振り返り、手に持ったスマホを見る。
「正確に言うとね」
楓は持っていた漫画本を置き、あたしを見た。少女漫画、それまだ読んでるわね。
「スマートフォンの中に居るわけじゃない。それを介して行き来してるだけだよ。肉体的に俺はちゃんと存在してる」
「ロボットでも、透明でもCGでも幽霊でもないってことね」
「ないってこと」
そうだよね。触ったりできるしね。
「あたし、CGだと思ってたよ、楓のこと」
「大丈夫、ちゃんと人間だから」