インストール・ハニー
「あやまる必要は無いさ。青葉のおかげで俺は外の世界に出られたんだから」

「なんか、間違いなのかあたしが知らずにやっちゃったのか、あれよあれよとインストールされちゃって……あんまり詳しくないし」

「……そうだったのか」

 運命的な出会いでもなんでもないよねこうなってくると……雰囲気ぶち壊し。

「それだって良いじゃないか。こうして出会ったんだから」

「そう……だね」

 夏休みの課題は机にあって、あたしは座っているけど、ペンが動いていない。進んでいないってこと。でも、いまはそれより楓の話の方が大事。

「楓の住む部屋って……日本なの? どこにあるの?」

「知らない。俺もよく分からない」

「ご両親とかは……」

「さあ……昔の記憶もあまり無い。子供の頃からナッツしか側に居なかったよ」

 そうなんだ。聞いて悪かったかな。

「あたしに、そういうの話しちゃって……いいの?」

「……どうだろ」

 けっこう適当だな。小さく「ダメだったかも」って言うから、少し戸惑ったけど、聞かなかったことにすれば良いか。


 楓の外見は日本人だ。だから瞳が青いだとか、金髪だとかいうわけでもなく。ピアスもしていないし、出で立ちが派手なわけじゃない。普通に街にを歩く今時の若者。

 端正な顔立ちと落ち着いた声。人目を引く容姿が、生い立ちを聞いて悲しく光るように思えた。

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