インストール・ハニー

「ちょっと! 佐山さんじゃん。残念だね、楓くん休みで」

 一海が小声で言ってくる。見えないように棚に身を隠して覗いてるけど、たぶん見えてるよ。思いっきり。

「うん……たぶん楓に会いに来たんだと思うけど」

 無駄足だった佐山さんもちょっと気の毒。

「へい、ケーキ出るよ」

「はい」

 あたしは厨房からチーズケーキと桃のシャーベットが乗った白い皿を受け取り、それとキンキンに冷えたコーラを佐山さんのテーブルへ持って行った。

「チーズケーキと桃のシャーベット、それとコーラです」

「ありがとう。美味しそう!」

 まずはコーラをグイグイ飲んだ。

「あー! 美味しい」

 今日も天気が良く、猛暑日だ。駅から長い上り坂を登って来なくちゃいけないから、けっこう大変だ。

「佐山さん1人で来るからびっくりした。電車で来たの?」

「うん。今日あたしバイト休みだったし。宿題やった?」

「んーん! 全然進んでないよ!」

「あたしもー! 数学とかもう投げ捨てたいわ」

 なんだ……佐山さんて話すとけっこう普通って言うか楽しいっていうか。教室でのイメージと違うなぁ。

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