インストール・ハニー
「今日は1人で来ようと思って……お店に迷惑かけてもアレだなって」

 なんだ、良い子じゃん普通に。ちょっと誤解してたかも。取り巻きの方に寄りつかれてる感じなのかなぁ。

「あの……今日はあの彼は?」

 ああ、それは外さないんですね……。あたしはなるべく表情を変えずに努めた。

「楓くんて言うの。今日は休みなんだ。ごめんね、せっかく会いに来てくれたのに。明日は居るよ」

「明日からあたし家の旅行なんだー。そっかぁ、残念!」

 眉毛をハの字にして、残念がった。旅行行くんだ、それも良いなぁ。今年もお父さん仕事忙しいしあたしもバイトだから、お母さんと健太郎でどこか遊びに行くんだろうな。それはそれで2人楽しそうにしてるけど。

「楓くんて、山都さんの彼氏だって……」

「あー……」

「いや、別に良いんだけど! かっこいいよね。素敵だなって思って」

 1回しか見てないし、それ顔だけで判断してませんか、佐山さん……。

「かっこいいのもだけど、山都さんを朝、校門まで一緒に歩いて送ってくるなんて、優しいんだなーって。良いね。迎えに来るって言ってたし」

「あ……ありがとう」

 さすが……あれだけのシーンを、どこからか見ていてそこまで判断するなんて。しかもよく見てる。確かにね、一緒に歩いて登校して校門で「授業がんばっておいで」とか、帰りも迎えに来るからとか、なかなかできるもんでは無いと思いますよ。

「うん……良い人だよ。楓は」

 良い人。なんていうか、それだけで表現できないけど。


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