インストール・ハニー
空が夕焼けに染まる。ここから一気に暗くなるんだ。8月後半に入ってから、暗くなるのが早くなった。
海で泳いで、遅いお昼を食べ、また海に入って。岩場に行ってみたり。カニが居た。
「カニ居たぞカニ!」
珍しいのか、楓がまたはしゃいでいる。こんなに楽しそうにしている楓を見るのは初めてだった。良かったな、一緒に来て。
「楓くん、水族館行ってくればいいんじゃない? 青葉と。電車で行けるし」
「いいな、今度行こう」
「あ……うん」
今度っていつだろう。話を合わせただけだろうけど、こういうこの先がどうのっていう話題に触れて欲しくなかった。聞きたくないもん。あたし達のこと、一海は知らないんだから仕方ないけど。
「あっち行こう。もう暗くなるし」
砂浜の方に戻るように促した。本当はもっと遠くまで行きたいけど。
「もう花火しようよ。薄暗くなってきたし、ちょうど良いんじゃない?」
岩場から砂浜に戻りながら、一海が言った。そうだよね。真っ暗になったら花火くらいしかできないし、海に入れないから。花火終わったら、今日は終わりだ。
「本日の締めって感じだね」
終わりたくなくてそう言ったんだけど、一海が「終わりたくないよー!」って叫んで、あたしも同じ気持ちだった。
後ろ姿しか見えなかったから、楓はどういう顔をしていたのか、見えなかった。