インストール・ハニー
「もう夏も終わっちゃったなー……」

 バーベキューも花火も海水浴も、終わってしまった。花火の後片付けをして、もう暗いからって一海はさっさと帰っちゃうし。名残惜しんでる場合じゃなかった。だから、あたし達も支度して早々に帰ってきた。

 帰ってくると、脱力感。さっきまでとても楽しかったから、その落差で気持ちが落ち込む。

「まだ暑いじゃないか。残暑だな」

 サンライトからの帰り道、楓を帰したんだけど、また呼び出しちゃった。だって、こんな日に1人で居たくなかった。

 シャワーを浴び、ぬるいお湯にゆっくり浸かった。疲れが溶け出て行くようだった。そして、部屋に戻って楓を呼び出した。化粧水をパンパンと簡単に付けながら、楓をちらっと見た。少し日に焼けた横顔。

 暑いのに熱い紅茶飲んでるの。変なの。熱いからって冷たいものばかりも良くない、とか言って。一応、爽やかにオレンジのフレーバーティーにしてあげた。寝る前にカフェイン良くないのに。

「楓もお風呂入ってきた?」

「ああ。短めだったけどな。汗を流してきたよ」

 海から帰る時に、サンライトでシャワーを貸してもらえたけど、髪の毛も体もちゃんと洗って、ゆったりするとやっぱり違うから。楓の髪は、まだ少し濡れていた。背伸びをして腰を回したりしてる。たくさん遊んだもんね。

「……」

 なんだか会話が続かない。夏休みの終り、バイトの終り。そういうものでしんみりしちゃうな。夏休みは終わりだけど、あたし達の日常は続いていくんだから。

 楓は、どういう日常に戻るんだろうか。

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