平和契約~旦那様は暴君魔王!?~
プロローグ
紅(アカ)の飛び散る戦火の闇。
――火薬の臭い。
――血の臭い。
「っは…、どうして…?」
ガクン…ッ
私は力なくその場にへたれこむ。
そして、今、目の前にいる“悪魔”を睨みつけた。
「……何が目的なの」
収まらない炎の中。
オトコは鮮血の瞳をゆらりと光らせ、
その切れ長の瞳に炎を映す。
そして、形の良い薄い唇から舌を出すと、
『ふ。』
端正な顔についたソレをぺろりと舐めて軽薄に笑い、口元を歪ませた。
『…ニンゲンは脆くてつまらねぇ。』
夜風に靡く長髪は、
燃え盛る烈火の炎の如く揺らめく。
「…なぁ。」
「っ、!」
無理やりオトコに顎を持ち上げられ、顔をあげさせられる。
鮮血の紅い瞳
炎の赤髪
顔や衣服に滲む赤
…赤なんて、大嫌い。
戦火の闇を背景に、私を映しながら愉快そうに笑い、その口から出た言葉。
“―――俺と、平和契約しねぇか?”