君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
助手席に乗りこんだ時、バッグの中の携帯が震えた。

開くと、秀二からのメールで、大丈夫だった? と心配する内容。


連絡をくれたのは、あれ以来。

彼にも、責任を感じさせてしまったんだ。

悪いことをした。


大丈夫、とだけ返信しようとして、運転席の新庄さんからの視線に気がつく。



「…連絡とったり、してないですよ」

「別に、好きにしたらいい」



ふいと前を向いて、エンジンをかけた。

車が息を吹き返す。



「気には、してくれませんか」



ちょっと残念で、正直に訊いてみると、新庄さんが新しい煙草をくわえながら、フンと鼻で笑った。



「あんな小僧をか」



そんな小僧と、私は長いことつきあってたんですよ。

すみませんね。


嘘でも妬くふりとかしてくれてもいいのに、と思いつつメールを打ちはじめると、いきなり携帯を取りあげられた。



「後にしろ」



ぱちん、とたたんで、ぽいと膝の上に投げ返してくるのに、思わず笑いがこみあげる。

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