君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「メディアチームは林田チーフを入れて7名です。井口さんが予算管理とTV…」
体制図を描きながら説明すると、ところどころで素早い質問が飛んでくる。
「カスタマー系のイベントと、内部イベントの担当は分かれてないの?」
「昔は分かれていましたが、今は同じ担当者が勤めています」
「何か理由が?」
「ひとつは、先年の経済ショック以降、カスタマーイベントが激減したことです」
「もうひとつは」
「それ以降、運営費の安さが第一に求められるようになって、価格競争で他店に負けました」
なるほど、とうなずく。
ひととおり説明が終わった後に、さりげなく訊かれた。
「大塚さんから見た、この部署の問題点は?」
おっと。
「…メディアチームと製品チームの、コミュニケーション不足です、周知の事実ですが」
慎重にそう言うと、じっと無言で目を見つめられた。
逸らすわけにいかず、こちらも見返していると、堤さんがふっと目を伏せて、笑う。
「僕もそう感じた、なんとかしたいね」
詰めていた息を吐く。
とりあえず、合格したんだろうか。
切れそうな人だな。
物腰は柔らかいけど、たぶん相当ゴリゴリ切りこんでいく、フォワードタイプだ。
春日部さんの抜けるこの部署には、ぴったりの人かもしれない、と感じた。