君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「あれっ」
「よう」
ビルの最上階にある社員食堂で、新庄さんとばったり出会った。
広大なフロアに無数のテーブルと椅子が並ぶ食堂。
和洋中、あらゆる外食企業が入っている。
ここで食べることもできるし、テイクアウトして席で食べる人もいる。
文句なしの環境なのだけれど、私や彩は外に食べに行くほうが好きで、どうしても時間のない時や、天候が荒れている時だけこうして利用する。
今日は彩が社内にいないし、外は今にも降りそうなので、席で済まそうと買いに来たのだった。
新庄さんも同じく、テイクアウトをするつもりらしい。
「食べていきませんか」
せっかく会えたので、ダメ元でそう誘ってみる。
新庄さんは少し考えて、そうするか、とうなずいてくれた。
私はここのところ、すっかりわがままになっている。
こんなふうに、自分の希望を押しつけるほうではなかったんだけど。
でも、新庄さんが甘やかしてくれるから。
無理な時は無理と、はっきり言ってくれるから。
したいことはなんでも、正直に言ってみるくせがついてしまった。