君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「新チーフが、先日いらしたんですよ」
ランチタイムど真ん中で、ほぼ満席の中、奇跡的にふたり席があいていた。
空は灰色だけれど、その奥の太陽がまぶしく、床までガラス張りの窓際は明るい。
へえ、と言いながら新庄さんが塩焼きの魚をつつく。
いつも思うけど、食べ方が綺麗だ。
別に優雅というのではなくて、どちらかといえば無造作なんだけど、きちんとしつけられた食べ方をする。
どんなふうに育ったんだろう。
どんな29年間だったんだろう、と考えて、ふと思いついた。
「新庄さんて、誕生日いつですか」
「3月」
あれっ?
てことは、今年30歳?
「学年、私と4つ違うんですね?」
「知らなかったのか?」
なんとなく立場がなくて黙る。
てっきり、3つ上だと思っていた。
早生まれだったのか…。
というか、こんな基本的な情報を知らずにいたなんて。