君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「失礼します」
外出から戻ったところを、突然課長に呼ばれ、フロアの会議室に入る。
そこには課長と、堤、林田両チーフの他、課員が数名と。
なぜか、新庄さんがいた。
「ごめんね、突然。集まれる人だけ集まってもらったんだけど」
課長が話しだす。
フランクな会議によくある風景で、みんなバラバラと立ったままで、机に腰をかけたりしている。
私もドア付近の壁にもたれて、課長の言葉を聞いた。
「製品とメディアチーム間の風通しね、これ、前から課題だったのは、みんなも知ってるとおりだけど──」
要約すると。
異動も続いたし、いい機会なので、ここらで体制をちゃんと整えて、風を通そう。
そのために、ちょっとみんなでブレストをしよう。
ということだった。
新庄さんを引っ張ってきたのは、課長と林田さんの思いつきらしい。
両チームの現状に詳しくて、そもそもこの課題をずっと問題視してきたからだ。
「異動した前任者呼ぶって、荒業…」
高木さんのつぶやきも、もっともだ。
だけど、誰もが新庄さんの存在を、ありがたいと思っているのは、間違いなかった。
「ごめんね、忙しいとこ」
「いえ、たいして忙しくもしていませんから」
両手を合わせる林田さんに、面倒がる様子もなく新庄さんが答える。