君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「来週の…」
「金曜だね」
新庄さんが休みに入る直前だ。
どうしよう、休み中、会う時にでも、何か渡そうか。
「あんたたち、クリスマスも何もしてないよね」
「だって年末は毎年、仕事でそれどころじゃないでしょ」
そもそも、そういう日を一緒に過ごす関係なのかすら、わからない。
試しに、彩は? と聞いてみると。
うーん、というあいまいな答えが返ってきただけで、終わってしまった。
「そういえば、あんたんとこの新チーフ、企画部で新庄さんと一緒だったんだね」
ぼんやりしながらも、前回の話を一応は聞いていたらしい。
「そうみたい。なんか、あまりいい関係じゃない様子だけど
「新庄さんが新人の時のブラザーって、その後、ワケありな退職してるの、知ってた?」
「そうなの?」
うちの会社には、ブラザー制度というものがあって、新人が入社すると、一年間は特定の先輩社員がつきっきりで教育することになっている。
その一対一の相手をブラザーと呼び、相性にもよるけれど、その絆はかなり長いこと続いたりもする。
「鬱かなんかで、相当ひどい状況でやめたって話。名前、なんだっけなあ」
この会社には、精神を病んでやめる人は、山ほどいる。
それがわざわざそんな言われかたをするということは、よほど、だったに違いない。