君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
山に連れてってもらおう。
海は何度かドライブしたから、今度は山がいい。
関越を北上して、上毛の山を車で走ろう。
彩のことや、新庄さんと堤さんのことを考えているうち、ふとそんなアイデアが浮かんだ。
寝る前に、その思いつきをメールする。
間を置かず、「了解」という短いメールが返ってきた。
「来期、おそらくですが、予算枠に余裕があるようで。こちらの企画、追加提案してみようと思います」
「空港のだねー、いいと思う。よく出稿してもらってる雑誌とのコラボだし」
こういう大物案件、今が薦めどきかも。
林田さんが、資料を見ながらうなずく。
PCの電源を落としかけていたのを、ぎりぎりつかまえたところだった。
長くこのクライアントを担当しているだけあって、林田さんの勘はいい。
2千万円クラスの出稿。
もしかしたら、採用してもらえるかもしれない。
「来週すぐ、行ってきます」
「うん、よろしく」
月曜朝一番に、アポをとろう、と頭にとめて、私も帰ろうとしたところに。
「おふたりも、どうですか」
堤さんから声がかかった。
見れば、部の何人かが帰り支度をして集まっている。
飲みだ。
林田さんが、ぜひぜひ、と大乗り気だったので、私も便乗した。