君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
新庄さんは、違う駅へ向かうらしい人たちに別れを告げて、こちらへ顔を向けた。

堤さんと私を、交互に見る。


私はたぶん、よほど心細そうな顔をしていたんだろう。

目が合った瞬間に、新庄さんは眉をひそめて、ゆっくりとこちらへ近づいてきた。


やあ、と堤さんが迎える。



「珍しいね、新庄がこんな遅くまでつきあうなんて」

「新しいメンツだからな」



私は思わず、堤さんと距離をとるように、新庄さんのほうへ半歩、身を寄せた。

それを見逃さなかったらしく、堤さんが、かろうじて私に聞こえるくらいの声で、ほんと妬けるね、とつぶやく。



「大塚さんは、やっぱり新庄なんだね」



残念、と言って、あっさり私たちを置いて駅へと向かう。



「堤、こいつにかまうな」



その背中に、新庄さんが鋭く言った。

厳しい声音に、私までびくりと震える。


堤さんはちらっと振り向いただけで、細身のコートをひるがえして、地下鉄の駅へ消えていった。



「何を言われた」



訊かれて、うつむく。

何を言われたのか、自分でも理解できていない。

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