君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「私が、堤さんでなく、新庄さんのほうになついているのが…気に入らない、という感じのことを」
自信がないまま答える。
新庄さんが、堤さんの消えた方角を見ながら、舌打ちをした。
わかっているんだろう。
堤さんが見せたのは、私への関心なんかじゃない。
新庄さんへの、冷たい敵意。
私、こういうのは、女の専売特許で、男同士ってもっとオープンで、いい意味でドライなんだと思っていた。
「新庄さん…」
思わず、袖をつかんで名前を呼ぶと、すがるような声になった。
「やっぱり、何かあったんでしょう? あそこまで…」
憎まれてるなんて、とは口に出せなくて、言葉が消える。
新庄さんは、腕に置いた私の手を、安心させるように叩いた。
「その話は、今度でいいか」
今日は、帰らないと。
「終電逃しても、送ってやれないから」
はい、と。
答えるしかなかった。