君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「今後の体制案です。着実に進めて、両チームの連携を高めましょう」
週明けの定例会で、堤チーフが資料を配布した。
「クライアントを含めた打ち合わせも必要になるので、林田さん、調整をお願いします」
「了解、部長も同席だね」
この間話されたとおり、両チームのチーフの上に、統括を一人配置するという案だ。
進捗、予算などをすべて把握し、管理するそのポジションには、堤さんの名前があった。
課長と、両チーフとで話しあった結果とのことで、確かに妥当だろう。
「両チームが、実質一人ずつ減、か」
「無理は承知です。けど来期の増員まで、この体制で回せれば」
後はなんとかなる。
その言葉に、みんながうなずいた。
現在この部は、新庄さんの異動により、純粋に一人足りない。
逆に言えば、来期に増員される可能性が高い。
それまで堤さんが製品チーフと統括を兼任し、いずれは単独でどちらかのポジションにつく。
この余裕のある時期に、多少無理をしてでも、その体制を敷いてしまおう、というわけだ。
堤さんが、まだ製品チームのプレイヤーとして仕事を持っていないのも好都合で。
相当の能力と馬力が必要とされるポジションだけど、彼ならできるであろうことは、誰もが納得済みだった。
「同時に座席のレイアウト変更もしたいと思います。大塚さん」
「はい」
突如呼ばれて、顔を上げる。
堤さんが、にっこりと笑った。
「総務部との調整を、お願いできるかな」
はい、と答えた声は、固かったと思う。