君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
今朝会うと、なんの含みもないような笑顔で、おはよう、と声をかけられた。

その後も、これまでと何も変わらない。



『巻きこんだようで、悪い』

「いえ…あ、ちょっと待ってください」



堤さんが戻ってきた。



「堤さん、新庄さんです」



受話器を掲げて合図すると、堤さんは、なぜか自分の席ではなく、私の席のほうにやってきて。

そのまま、私の持っていた受話器を、ゆっくり取りあげた。



「新庄?」



すぐそばに立たれて、居心地が悪いのを隠すこともできず、身を縮める。



「うん、そう。お礼も兼ねて。助かったからね」



堤さんは、あくまで平静な様子で。

空いている手は、私の椅子の背に置かれている。



「いや、お前の目のつけどころは、見事だから」



何につけても。

そう言いながら、私を見たのがわかった。


思わず見あげてしまい、目が合う。



「参考になるよ、ほんと」



私と目を合わせたまま、口元には微笑を浮かべて。

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