君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「その後、どうしてるの」
なんとなく顔色の冴えない彩に、心配になって聞く。
「うーん、特に」
「まだ、逃げ回ってるの!」
うん、と子供のように彩がむくれる。
「話さなきゃ、進まないじゃない」
何を偉そうに、と自分でも思うけれど、このくらいは許されるかと、言ってみる。
そうなんだけど…とつぶやいたきり、彩が足をとめた。
「彩?」
ぐらりと、倒れこむようにひざをついて。
「彩!」
抱きとめてのぞきこむと、顔が真っ青だ。
つらそうに目を閉じたまま、大丈夫、と小さな声で言うけれど、そんなわけはない。
どうしよう。
救急車を呼んだら、大げさすぎて、彩が気にするだろう。
どうしたら。
夢中で携帯を開いて、一番に頭に浮かんだ相手の名前を、探していた。