君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
会社の医務室で、休ませることができた。
常駐のお医者様は、睡眠と栄養の不足からくる貧血だから、とりあえずは心配ないと言ってくれた。
そっと廊下に出ると、新庄さんが、寄りかかっていた壁から身体を起こして、こちらに来る。
「どうだ」
「心配はないそうです…あんまり、食べてなかったみたいで」
そうか、と安心したように息をつく。
私は、悔しくて、涙がにじみそうだった。
もっと、この間、ちゃんと彩の話を聞けばよかった。
謝恩会で会った時、彩の具合に気がつくことだって、できたはずなのに。
無理にでもうちに泊めて、何か食べさせればよかった。
自分のことで手いっぱいで、倒れるまで彩が悩んでいたなんて、想像もしなかった。
自分に腹が立って、仕方ない。
「あの、ありがとうございました」
改めて、新庄さんにお礼を言う。
なぜか新庄さんは、私のかけた電話に、数コールで出てくれたのだった。
いや、と言って、私の横の壁にもたれる。
「困ってる気がして」
それは、新庄さんの、勘なんだろうか。