君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
駆けつけると、彩を軽々と抱きあげて。
ビルの規則も無視して、新庄さんは業務用のエレベーターを選んだ。
オフィスのエレベーターじゃ、誰に見られるかわからない。
あの場面で、彩のために、そういう判断をしてくれる人。
「11営の、大塚さん?」
「はい」
カチャリと医務室のドアが開いて、若い先生が顔を出す。
「僕、もう勤務が終わるんだけど、ついでに彼女を病院に連れていこうと思って、念のため」
付き添ってもらうことは、可能? と訊かれ、はい、と答えてから、思いついた。
もっと適任がいる。
大森さん。
新庄さんと、目が合う。
私の考えが、伝わったみたいだった。
「ダメでした…」
がっくりと、廊下の片隅にある受話器を置く。
「さきほど会社を出られたそうです」
「携帯で、呼び出せればいいんだが」
だけど、理由を話せない以上、部署の人に番号を教えてもらうわけにもいかない。