君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)

少し寝て回復したのか、大森さんの姿を見て、彩は一瞬の混乱の後に、大激怒して。

医務室のものを手当たりしだいに投げつけかねない勢いだったのを、ぴしゃりと大森さんが諭して、おとなしくさせた。



「さすがでしたね…」

「先生が、気の毒だな」



私と新庄さんは無責任にも、さっさと医務室を出てきてしまった。

あとは、なるようになるだろう。


ごめん、彩、と心の中で手を合わせる。

荒療治になっちゃった。


でも、やっぱり逃げてちゃ、なんにもならないよ。

おせっかいをやいた分、私も頑張るから、勘弁して。



「まだ、仕事してくだろ」



意を決して、新庄さん、と言いかけたところを、持っていかれた。



「はい…」

「何時まで」



ええと、あと3時間くらいは、と訊かれるままに答える。



「残念ながら、車じゃないんだが」



何か、食べて帰るか。

そう言った新庄さんが、私を見て、驚いたような、困ったような顔をした。


私はたぶん。

泣きそうになっていたんだろう。

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