Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「俺は黒羽には彼女を渡したくなくてね」

 人気のない場所へ圭斗を誘導して、将也は言う。そういうことは三年である彼の方が熟知していたのかもしれない。
 しかし、それを聞いて、圭斗は思わず笑いたくなった。

「万年一位でむかつくから?」
「君、話を歪めるのが好きなんだね」

 将也は苦笑するが、圭斗も本気でそう感じたわけではない。わざとそうしたのだ。

「先輩が歪んで見えるからっスよ」
「確かにそうなのかもしれないね」

 肩を竦める将也には思い当るところがあるようだった。

「でも、それでもいいんだ」

 彼は全てを諦めているようだった。
 否、彼は悟ったつもりなのかもしれない。

「あいつは誰かを愛せる男じゃない。このままあいつが変わらないなら、俺はあいつから彼女を引き離すべきだと思うんだ。手遅れになる前に」
「言われなくてもわかってるっスよ」

 そこで将也は安心したような穏やかな表情を見せてきた。
 作り物の笑みではない、素の表情を。
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