Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「あの態度、本当にむかつくよね。まあ、彼女の意思に背くことは君ならしないと思ってるけど」
「そうやって、俺を縛るなんて卑怯な人っスね」

 かもしれないね、と将也は肩を竦める。

「俺にできないことが君にできるから少しだけ悔しいんだ」

 人間誰しも心に多かれ少なかれ闇がある。それが彼の闇なのかもしれない。

「もし、兄貴みたいに視えたなら、もっと側にいけるのに? トラブルメーカーとしてでも近付けるから?」

 おそらく将也は兄のように視えるわけではない。だから、今の位置から遠ざかることもなければ、近付くこともない。

「……君はその答えを知っているんだろうね」
「あんたが、もう絶望的なほどに知っているように、ね」

 二人の視線が交わって、将也は目を伏せ、圭斗は窓の外の空を見上げた。
 まるで、これからの二人の行先を暗示するかのように。
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