Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「運命なんて俺は信じない」

 もう一度、支配者としての魔女の言葉を十夜ははね除ける。
 彼は素直に従うような男ではない。
 支配者ではあっても、部員は従順なしもべではない。従うべきところでは渋々従うだけだ。
 尤も、黙っていることの方が賢明である。

 つまり、魔女と部員の関係はその程度のもので、信頼があると言えば語弊がある。
 魔女との関わりは一種のビジネスだとも言える。
 特に紗綾は魔女に従う理由がない。
 だが、従わない理由もなく、大抵は流されている。遊ばれている、ただそれだけのことなのだから。

「運命なんて他人がどうこう言うものじゃない。馬鹿馬鹿しいにもほどがある。さっきから聞いてれば、まったく、笑えるっスよ」

 誰もが何も言えない空気の中、彼は平然と言い放った。
 空気が歪む、それは暴挙だった。
 通り名に大した意味はない。それは真実を表してはいない。魔女は魔王よりもずっと恐ろしいからだ。
 けれど、十夜を恐れない男が、空気を読んで大人しくしているはずもなかったのかもしれない。

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