Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「魔女だか何だか知らないっスけど、予言者気取ってるなら、ただの傲慢じゃないっスかね。魔女なんて言われてるのも敬意じゃないっスよね」

 未だかつて、魔女にここまで好き勝手なことを言った男がいただろうか。
 紗綾が知る限りは存在しない。前部長の八千草もそういう人間ではなく、言うことを何でも喜んで聞くタイプだった。
 魔女の恐ろしさは圭斗やリアムにも事前に嵐が話していた。絶対に逆らうな、余計なことは言うな、ただ黙って頷いておけば良いと言ったのだ。
 けれど、これでは台無しだ。魔女の機嫌を損ねれば圭斗は追放されてしまう。
 紗綾は不安な気持ちで圭斗を見たが、彼は大丈夫だと笑う。最強の女を目の前にしながら、彼は恐れるわけでもなく、いつものように笑っていた。

 十夜に構うことをやめ、鈴子はじっと圭斗を見る。その瞳の奥にあるものを覗き込もうとするかのように。
 一年前自分にも向けられたその眼差しは紗綾が最も苦手とするものだ。
 そして、彼女はまた紗綾を見て溜息を吐く。
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