Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「話は聞いていたけれど、面倒臭い感じにしてくれたわね」
「こっちの生意気なのが榊圭斗で、こっちが仮部員のリアム・ロビンソン、自称サイキック」

 嵐が順に紹介するが、鈴子は興味なさげにしていた。
 彼女にとって重要なのは自分の駒として使えるかどうかにすぎない。

「二人も連れてくるなんて、うちのお姫様はさすがね」

 言葉の端々に刺を感じる。薔薇のような女性、美しいからこそ刺がある。あるいは、刺があるからこそ美しいのか。
 一年前の十夜のように散々罵倒されるに違いないと紗綾は覚悟していた。
 嵐が絶対大丈夫だと言った方法で獲得した生贄はサイキックであることを隠しているし、二人目は勝手についてきただけだと言い逃れるつもりもない。悪いのは自分だけだと言いたかった。
 赤い唇が三日月のように吊り上がる。魔女が笑った。

「でも、生贄は一人。例外は絶対に作らない。だから、あなたが決めるのよ、お姫様」

 視線で縛り、言葉で縛る。それは魔女の命令だ。逆らうことは許されないが、紗綾は納得できなかった。
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