Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
 車というものは移動する檻のようなものだ。
 運転席に魔女、後ろには魔王という状況では嬉々として同乗したがる人間などいるはずもない。
 楽しいドライブになる可能性は皆無だ。
 乗ってしまったが最後、目的地まで生きた心地のしない旅が約束される。
 後部座席に二人で押し込められなかっただけ幸いと思うべきなのかもしれない。
 正直に言えば、ただでも乗りたくない。
 否、魔女の車ならば喜んで乗る人間が一人だけ紗綾の脳裏に思い浮かぶが、特殊な例であり、一言で言ってしまえば変人だ。
 紗綾はそのようにはなれない。

 シートベルトをきっちり締め、高まる緊張の中、紗綾はまるで誘拐される子供の気分だった。
 行き先もわからないまま、恐ろしい人間二人と同じ車に乗り合わせ、重苦しい時間を過ごす。
 幸いなのは、殺されはしないということだろうか。

 魔女の運転は安全運転と言っても差し支えないものだったが、緊張を解いて落ち着けるはずもない。
 魔女がいる限り、リラックスというものは、まずあり得ないと言っていいだろう。
 彼女は存在するだけで緊張感を与える存在だ。身が引き締まるというものではない。恐怖で硬直するのだ。
 本能的に恐怖を与えるものであるのかもしれない。
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