Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
 何を考えてやり過ごそうか紗綾が考えた時、魔女が口を開いた。
 現実逃避をしようと思ったのに、先手を打たれた気分である。いっそ、乗り込んですぐに狸寝入りを始めたほうが利口であったのかもしれない。
 魔女が素直に寝かせてくれるとも思えないのだが。

「言いたいことがあるなら、遠慮なく言っていいのよ? 納得してないことがあるでしょう? あなたなら、どんな愚問も許してあげられるわ」

 不満を見抜かれて、紗綾は逃げ出したい気持ちになる。
 隠せるはずもなかったのだが、気付かないフリをしていてほしかった。
 この状況なら言えるというものでもない。この状況だからこそ言えないといった方が正しいくらいだ。
 それも愚問であるという前提では口を噤みたくなるものである。
 そうだろう。彼女にとっては何もかもが愚問に過ぎない。だから、何も言いたくない。
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