Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「……貴様ら、呪うぞ」

 相変わらず、ソファーに座ったまま十夜は視線だけを向けてくる。
 不機嫌なオーラが全開である。

「黒羽も撮ってあげよっか?」

 嵐はニヤニヤと笑ったが、「いらん」と十夜は即答する。
 彼だけが常識人であることに安堵してから、紗綾は重大な問題に気付く。

「って言うか、消して下さい!」
「嫌」
「俺も嫌っスよ」

 紗綾の精一杯の願いも虚しく、嵐はしっかりと保存したらしく、携帯をポケットに収めた。圭斗も同じだ。
 そうされると紗綾も奪い取れない。

「いいじゃんいいじゃん。今度ご飯奢ってあげるから」
「結構です!」

 教師のくせに不謹慎だが、嵐には無意味な言葉でもある。
 適当に聞き流すのが一番なのだが、この状態で落ち着いて対処できていたら、生贄になることもまずなかったはずなのだ。

「じゃあ、今度俺とデートしましょうよ。甘酸っぱい青春っスよ」

 そもそも、初対面の下級生にまでいじられる自分は一体何なんだと、紗綾はガックリと肩を落とした。
 魔の巣窟に加わったのはやはり悪魔、自分は生贄のまま、味方はいないらしいと悟ったのだ。

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