Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「圭斗君が好き? それとも、違う誰か?」

 その声はひどく優しい。けれど、答えに導いてはくれない。
 何かを発しようとして言葉が出てこない。

「無理に答えようとしなくていいよ」

 将也に遮られ、それでも、答えなければならない気がして、紗綾は俯いた。

「わからないんです……誰のことが好きかって言われても全然答えがでないんです」

 香澄には何となく相談し辛かった。彼女には色々と反対されているし、他に相談できるような友達もいない。

「でも、君のことを好きな人はいっぱいいるよ? もちろん、田端君は友情だけど、圭斗君はストレートだと思うし、あれでなかなか優良物件だと思う。先生もふざけてるようで結構本気っぽいし、黒羽もそれなりに心を許していると思う。だって、みんな、優しいでしょ?」

 将也が言うことはすんなりと紗綾の中に入ってくる。いつだって、彼はどこか兄のようである。
< 303 / 712 >

この作品をシェア

pagetop